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苔玉(こけだま)の作り方・育て方の基本について
今回は、苔テラリウム専門サイトということであまり触れてこなかった【苔玉】のお話です。
コケを専門に扱っていると、日々いろいろな質問が寄せられます。なかでも、「苔玉が茶色くなってしまった」「苔玉が上手く育たない」「苔玉の作り方が知りたい」など、苔玉についての質問も多いです。
そこで、今回は、
1.苔玉の作り方
2.苔玉の育て方のポイント
3.茶色くなってしまう理由
4.テラリウムでも楽しめる苔玉
について、詳しく解説していきます。
苔玉とは?
苔玉(こけだま)は、草木の根をケト土などの粘土質の土で包み、土のまわりにコケを巻きつけたもの。盆栽の楽しみ方の一つだと考えればよいでしょう。
じつはそれほど歴史が古いものではなく、平成になってから流行した比較的新しい楽しみ方なのです。
苔玉の原型は『根洗い』
盆栽の鑑賞方法の中に、『根洗い』という楽しみ方があります。
草もの盆栽を数年育てたのちに、盆栽鉢から取り出して、根鉢の状態でお皿などにおいて鑑賞する方法です。この根洗いを飾るときに、根のまわりにコケをあしらうこともあったそうです。夏には涼しげで良いですね。
ただ、この根洗いの状態にするには、時間をかけて根鉢が崩れない状態にまで盆栽を育てなければなりません。そこで、この『根洗い』を簡易的に作ったものが苔玉であると言われています。(苔玉の起源や元祖については諸説あり、どれが本当なのか…もはやわからないので多くを触れないでおきます)
苔玉という呼び方の他に、草玉という呼び方で広めている盆栽家さんもいらっしゃいます。
苔玉の作り方
苔玉の作り方は使う植物にあわせていくつかの方法がありますが、ここでは一般的で簡単な作り方を説明します。
まず苔玉の土作りです。ケト土・赤玉土・富士砂・くん炭・肥料などを配合し、水を加えて良く練った粘土状の用土を使用します。
粘土質になるのはケト土です。ただし、ケト土単体だと土が密になりすぎて根が呼吸できなくなってしまうため、赤玉土や富士砂や炭などを混ぜて空気や水が入りやすくしています。
次に、苔玉に使用する苗木を用意します。根を水で洗って土をすべて落とし、用意した苔玉の土で根を包み丸く整えます。根を丸裸の状態にして苔玉の土に入れ替えるイメージです。
用意する苗木は、ガジュマルやテーブルヤシなどのミニ観葉植物でもよいですし、松やモミジなどの盆栽用苗木を使ってもよいです。苗木選びが楽しいところ。
根を包んだ苔玉の土の周りをコケで包みます(苔玉に使うコケの種類は後述します)。
土が見える部分がないように、苔玉の下まですべて包んでください。
このままだとコケがはがれてしまうため、糸で巻き付けて固定します。
糸は黒か緑の木綿糸がおすすめ。糸が目立たず、コケと同化してくれます。(発色の良い緑の糸だとかえって目立ってしまいます)
一度水につけて水を吸わせたら、お皿に置いて完成です!やってみると結構簡単ですよ。
苔玉に使用するコケはハイゴケがおすすめ
苔玉に使用するコケの種類は、【ハイゴケ】を使うことが多いです。シート状に広がって育つハイゴケは作業がしやすく、苔玉作りに適しています。
他にも、シノブゴケやツヤゴケ、ヒツジゴケ、アオギヌゴケの仲間などが使われます。
また、ホソバオキナゴケやアラハシラガゴケも苔玉に使われることがありますが、塊で育つため、やや難易度は高め。ハイゴケで作ったものよりも見た目に美しい作品になります。
苔玉の育て方のポイント
皆さんが失敗しがちな水やりに絞って、3つのポイントにまとめました。
ポイント① 水やりはコケが乾いてからたっぷり
コケの表面が乾いてきたら、ジョウロを使って苔玉の中に水がしみこむまで、たっぷりと水をかけます。
ポイント② お皿に水を溜めない
普段苔玉をお皿においておく場合には、お皿に水を溜めないように気をつけましょう。コケが腐ったり、植物の根が傷む原因になります。
ポイント③ 真夏の水やりは涼しい時間に
真夏の暑い時間帯に水をかけると、苔玉に含まれた水がお湯になり、ゆだってしまいます。日中は少々乾いても問題ありませんので、夜か早朝の涼しい時間帯に水を与えてください。
どうして?苔玉のコケが茶色くなってしまう原因
苔玉に関する質問で一番多いのが、「苔玉のコケが茶色くなってしまった」というもの。
苗木は生きているのに、コケが茶色くなってしまう。せっかくコケも一緒に楽しめると思ったのに、それでは残念ですよね。
苔玉のコケが茶色くなってしまう原因は、大きく2つ考えられます。「置き場所」と「水やり」です。
原因その①・置き場所:室内で育てていませんか?
苔玉を育てているのはどんな場所ですか?室内のキッチン周りや出窓、玄関などに置かれていることが多いのではないでしょうか。
苔玉に使われるハイゴケは、湿度があり、明るく風通しの良い環境を好みます。空気の動かない薄暗い玄関やお手洗いでは、カビが生えてきてしまうことも。
明るいキッチン周りや出窓でも、人が暮らしている場所はエアコンを使うなど、空気がドライになりがち。苔玉のコケには過酷な環境です。
苔玉にとって理想的な場所は、屋外の明るめの日陰。できれば自然の雨がかかるような場所が良いのです。(これは最近流行っているミニ盆栽にも言えることです)
可愛らしい苔玉は室内インテリアとして置きたい気持ちになるもの。ですが、元気に育てるという視点では、屋外に置くのがベストなのです。
原因その2:水やりすぎていませんか?
苔玉のコケがダメになってしまう原因もうひとつは、水の与えすぎ。
コケは湿気を好むから常に水分を含ませていないといけない…と勘違いしていませんか?苔玉を置いているお皿に水をためておいたりすると、水分は過剰になってしまいます。
常に水を含んだ状態だと、コケはストレスを受けて枯れてきてしまいます。意外と思うかもしれませんが、コケは乾燥に強い植物。少し乾いても問題ありません。
コケが好きなのは、水に浸っているよりも、空気中の湿度が高いシットリした状態。雨や曇りの日の屋外の空気のような感じをイメージしてください。
理想的な水やりの仕方は、朝早い時間または、夜遅い時間にジョウロを使ってたっぷりと水をかけること。その後、余分な水をよく切ってからお皿に戻しましょう。
こうすることで、苔玉の中の土までよく水がしみこみ、かつ余分な水がお皿にたまってしまうのを防ぐことができます。
コケは元気なのに、苗木が枯れてしまう原因は?
苗木だけが枯れてしまう人のほとんどが、水やりを霧吹きだけで行っているパターン。
周りのコケだけがしっとりしていればOKであると勘違いして、中の土まで十分に水やりができていない状態です。こっちは水が足りていないということですね。
苗木はコケに包まれた【土】から水を吸っています。苗木に水を与えるためには中の土までしっかりと水をしみさせる必要があるのです。
苔玉を室内で綺麗に飾るにはどうしたらよい?
苔玉を(コケも苗木も綺麗な状態で)室内で維持管理するのは結構大変です。“無理”というと苔玉屋さんに怒られそうなので ”大変”といっておきます。
それでも、いくつかの方法がありますので、ご紹介しましょう。
屋外の半日陰(明るめの日陰)で育て、たまに室内に飾る
通常は屋外の環境の良い場所(明るめの日陰)で育てて、室内に飾りたいときだけお部屋に移動する方法です。盆栽などもそうやって、来客のあるときだけ床の間に飾ったりしますよね。
室内に飾る期間は一週間程度までにして、普段は屋外で育てましょう。
コケは飾りと割り切って室内で育てる
コケは飾りと割り切って、3~4カ月に一回新しいコケを貼りなおす方法もありです。
コケが傷んできたら、巻きつけた糸を切り、古いコケを外します。土を新しいコケでくるみなおし、再び糸で巻きなおします。
コケ屋的にはコケも大切にしていただきたい思いですが…
こんな楽しみ方も:テラリウムで苔玉を楽しむ!
苔玉を室内で綺麗に育てたいという人には、ガラス容器に入れてテラリウムで育てる方法もあります。この場合、合わせる植物や使うコケがテラリウム向きである必要があります。
おすすめは、コケだけで丸い苔玉を作って楽しむ方法。コケだけで苔玉を作る場合には、フローラルフォームを芯材に使って作ると、清潔に育てることができます。
詳しい作り方はこちらの動画を参考にしてください。
苔玉の作り方・育て方まとめ
●苔玉を室内で育てるのは結構難しい。基本は屋外の半日陰で育てます。
●水やりは中の土まで染みこむように。水のやりすぎもNG。
●コケは飾りと割り切って、定期的に貼りかえるのも一案。
●室内で育てるならば、テラリウムで育てる方法も!
丸く可愛らしい苔玉は人気がありますよね。茶色くなってしまった原因がわかれば対策もわかってきます。いろいろな楽しみ方がありますので、苔玉作製にもチャレンジしてみてください。
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