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牧野植物園と牧野富太郎ゆかりのコケ
植物学者の牧野富太郎氏を知っていますか?
さまざまな植物を採集・分類し名前を付け、その功績から「日本植物学の父」と呼ばれる人物です。明治から昭和まで長く活躍し、そのチャーミングな人柄は今でも多くの人に愛されています(2023年のNHK朝の連ドラにも選ばれました!)。
博士の生まれ故郷である高知には「牧野植物園」があり、今も様々な植物を見ることができます。
先日牧野植物園を訪れる機会があり、じっくりと園内を観察してきました。
この記事では、牧野博士とコケとの関係と、植物園内の苔の見どころについてまとめました。これから牧野植物園を訪れる方はぜひチェックしてください!
牧野富太郎とコケ
牧野は様々な植物を採集・分類し名前をつけていますが、コケも例外ではありません。
その中でも牧野の名前がついたそのものズバリ「マキノゴケ(Makinoa crispata (Steph.) Miyake)」というコケがあります。ゼニゴケやジャゴケと似たような、べたっとした姿をしたコケです。
(写真協力:Oki Minae)
このコケは1898年(明治31)に牧野によって千葉県で採集されています。
このときの標本がのちに新属であると確認され、マキノゴケ属が誕生しました。種小名として牧野富太郎の名を持つコケは多数あるものの、属名では本属のみです。
高知県立・牧野植物園に行ってきた!
井上浩博士の碑
牧野植物園に行ったら、コケ好きは井上浩博士の碑を見に行きましょう。園内にあります。
井上浩博士も高知生まれの植物学者。蘚苔類の分類が専門で、ナンジャモンジャゴケの発見と命名をおこなったことでも知られています。
井上博士は1932年生まれなので牧野富太郎より後の世代の人ですが、高知ゆかりの植物学者ということで碑が建てられたのでしょう。
牧野富太郎の植物画で見るコケ
せっかくなので牧野の名前がついた「マキノゴケ」を見たかったのですが、園内にあるのかどうかは不明。
記念館で牧野の生涯を解説する展示が行われており、直筆の植物画の中にいくつかコケに関するものがありました。
これはマキノゴケの植物画ですね!出版前の校正なのか、赤鉛筆で指示が書き込まれています。
園内ネームプレートがすごい(でもコケにはない…)
牧野植物園の何がすごいかって、ひとつひとつの植物に付けられたネームプレート。さすが、植物分類学の父と言われる牧野氏の植物園です。
こんな狭い範囲でも(!)あらゆる植物にプレートがついています。
が!このネームプレート、コケ類にはついていないのです。シダにはあるのに…!
園内を見て歩くとそれなりに色々なコケがあったので、ネームプレートがないのはとても残念。細かいコケにもプレートがついていたら面白いと思うのでぜひ実現してほしいなあと思います(牧野植物園のエライ人に届け!)
牧野植物園の苔スポット!
どこへ行ってもコケばかり見てしまうのがコケ屋の性。牧野植物園で見ごたえのあった苔スポットを皆様に共有します。需要あるかわかりませんが、牧野植物園でコケを見たい!という方の参考になれば…(→園内マップを見ながらどうぞ)
結網山のホソバオキナゴケ
園内の南側にある結網山。山のてっぺんまで登ると、愛媛県で発見された新種のツツジ・トキワバイカツツジなどを見ることができます。
ここはホソバオキナゴケが豊富!
園内のほかの場所では全く見ることがなかったホソバオキナゴケが、この山にはたくさん生えています。
結網山から下りてくる道でもいろんなコケに出会えます。
ウチワゴケ(シダ植物)。
フデゴケ。
50周年記念庭園のスギゴケ
谷地にある50周年記念庭園は水路が流れていて、しっとりした環境。
ここでは植栽されたものと思われる、スギゴケ(恐らくウマスギゴケ)がたくさん見られます。
5月に行ったのですが、雄株に造精器がたくさんついていました。
お馬路近くの谷地
南園のお馬路近くも谷地になっており、石垣にはコケが。ふかふかのハイゴケ。
繊細で美しいシノブゴケ。
ちょうど絶滅危惧種のランであるガンゼキランの開花時期で、普段は公開されていない林床に入ることができました。
暗くてじめっとしていて、ここもゼニゴケやジャゴケがたくさんいましたよ。大群落になっているガンゼキランも見事でした。
温室とそのまわり
牧野植物園のシンボルといえば、ラピュタを思わせるようなかっこいい温室です。
温室内には水の流れがある場所もあり、立派なジャゴケが!
温室の周りも、コツボゴケなどがたくさん生えていました。
牧野植物園に行ったら、コケも見てね!
今回はコケ以外の植物は紹介しませんでしたが、もちろん様々な珍しい植物がたくさんあり、見ごたえはたっぷり。2日間行ったけどまだまだ時間が足りない感じでした…。
たくさんの植物に目を奪われる植物園ですが、探せばけっこう色々なコケも見られたので、牧野植物園に行かれた際はぜひコケにも注目してみてくださいね。