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奥入瀬渓流のコケと自然を訪ねて

青森県十和田湖から流れ出す、奥入瀬渓流。

緑の森の中を流れる清らかな清流、苔むした岩が点在する風景をCMなどで見たことがある方も多いかもしれません。

そしてもちろん、コケ好きなら一度は行ってみたい、憧れの苔スポットのひとつ。

今回機会があって奥入瀬を訪れることができましたので、奥入瀬のコケと自然についてまとめました。

奥入瀬渓流はどんな場所?

火山が作ったダイナミックな地形

奥入瀬渓流(奥入瀬渓谷)は青森県にある渓谷。十和田八幡平国立公園に属しており、特別名勝及び天然記念物に指定されています。

その水源は、青森県と秋田県が接する場所にある十和田湖です。十和田湖から太平洋まで約70㎞流れる奥入瀬川の、最初の14㎞が「奥入瀬渓流」とされています。

十和田湖は別名・十和田火山。噴火を繰り返しできたカルデラに、雨水や雪解け水が溜まってできたのが十和田湖なのです。

約1万5000年前(縄文時代ころですね)、この十和田湖が決壊し、大洪水が起きました。そのとき大量の水が流れ出し、周りの大地を削ってできたのが奥入瀬渓谷です。

渓谷を歩くと両側が切り立った崖になっており、ダイナミックな地形を感じることができます。そのときの水の勢いを想像するとすごいですね。

ちなみに、一番最近噴火したのは1100年前(平安時代ころ)だそう。そのとき森はかなりのダメージを受けたと考えられており、現在の奥入瀬の森は1100年前の噴火の後に再生してできた森。森としてはかなり若い森だということも、コケが目立っている一つの理由です。

コケの三大聖地

有名な景勝地である奥入瀬ですが、最近は特に苔スポットとしても注目されており、屋久島・北八ヶ岳と並び「コケの三大聖地」と呼ばれることも。

火山と洪水によりできた岩だらけの地形とその上に形成された森には、コケが大きな役割を果たしています。

岩の上にはまずコケが生え、そのコケを頼りにほかの植物が芽吹きます。

渓流沿いを歩いていると、大きな岩の上に生えた巨木をいくつも見ることができました。これもコケが豊富に生えるからこそですね。

渓流にはいくつもの支流が滝となって流れ込み、年中高い空中湿度を保っています。また、春~夏に太平洋から吹いてくる「やませ」の風も、湿潤な空気を送り込む要因になっているそう。

涼しく湿潤な環境が豊富なコケをはぐくみ、森をつくる土台になっていったのです。

十和田八幡平国立公園

奥入瀬渓流は全域が十和田八幡平国立公園に属しています。

自然は厳しく守られ、動植物の持ち出しは一切禁止されていますので注意しましょう。

奥入瀬渓流に自生するコケ植物

それでは、渓流沿いを歩いて見つけたコケたちを紹介していきましょう。

岩に着生し、ふさふさと群落をつくっているのは「エビゴケ」。

岩や倒木の上に分厚いマットをつくっている「ミヤマリュウビゴケ」と「ホンシノブゴケ」。

渓流ならではの、水際のコケも見どころ。半分水に浸るような場所に群落を作っていた「オオバチョウチンゴケ」。滝があるテラリウム作品などでも活躍しましたが、やっぱり水が好きなんだなあ。

なかでも驚いたのは「フロウソウ」の群落。林床で見ることはありましたが、こんな水際に生えていてびっくり。こんな大きな群落も初めて見ました。

ほかにも、学名に八甲田山の名前が入っている「タカネカモジゴケ」や、青森の名が入っている「アオモリサナダゴケ」など、青森県にゆかりのあるコケも教えてもらいました。

岩や倒木だけでなく、木道やコンクリートの階段などもびっしり苔むしていて、とにかく緑の量が多い印象。

苔むした倒木や岩にシダや樹木が生えているのはまさに天然の着生作品です。どこを切り取っても美しく、見飽きない風景…

渓流と並走して国道と遊歩道が走っており、体力がない人でも安心して歩けるのが人気のポイント。

登山はちょっと苦手…という方でも、車から降りてすぐに渓流散策が楽しめますよ。

東京から奥入瀬へのアクセスは?

奥入瀬へ向かう際の新幹線の駅は「八戸」か「新青森」が最寄りとなります。

東京駅から新幹線はやぶさに乗って、八戸まで約3時間。そこからレンタカーで1時間30分ほどで奥入瀬渓流の入り口に到着します。

八戸駅・新青森駅からはJRのバスも出ています。バスだと2時間ほどかかるようです。

奥入瀬に来たらまず立ち寄りたい「奥入瀬渓流館」

散策のスタート地点にあるのが「奥入瀬渓流館」。ネイチャーガイドも常駐しており、奥入瀬のなりたちや動植物について詳しく学ぶことができます。

カフェやお土産物もありますので、散策後の休憩にも。道草の苔テラリウムも販売していただいています。

ネイチャーガイドを利用しよう

今回お世話になったのは、NPO奥入瀬自然観光資源研究会の玉川えみ那さん。

玉川さんらが所属するFORESTONでは、「コケさんぽ」「シダ鑑賞ツアー」などのガイドツアーを主催しています。

図鑑を片手に歩いても初めての森ではわからないことが多いので、ガイドツアーに参加するのがおすすめです。一度ガイドしてもらうと、次ひとりで来たときもコケの見え方が変わってきますよ。

 

交通のアクセスがよく、体力がなくても気軽に歩ける奥入瀬の森。コケ観察初心者の方にはとてもおすすめなので、ぜひ機会をみつけて出かけてみてください。

旅の様子を動画にまとめました。あわせてお楽しみください。

 

 

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