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「テラリウム」とは?テラリウムの定義と歴史をおさらいします

最近人気の苔テラリウム。ガラス容器の中で手軽にコケを育てられるので、忙しい現代人にもピッタリです。

ところで、『テラリウム』とはどのような育て方のことで、いつ頃から広まったものなのでしょうか?

今回は、テラリウムの定義と歴史を紐解いてみましょう。

 

『テラリウム(terrarium)』とは

テラリウム

テラリウムの語源は、ラテン語で「テラ(terra)= 大地・陸地」と「リウム(arium)= 場所」を合わせた造語。

テラリウムとは、ガラスなど光が通る密閉された透明なケースの中で、陸上の生き物を育てる方法のことを言います。

密閉されたガラス容器の中では、水分が循環するため、長期間水を与えずに植物を育てることができます。小さな温室のようなものですね。

苔テライメージ

【テラリウム内での水分の循環】

・土から蒸発した水分や、植物の葉から蒸散した水分

・ガラスの表面で結露

・水滴が土に還り、また植物に利用される

 

テラリウムの起源は「ウォードの箱」

ウォードの箱
ウォードの箱<「ヨーロッパの歴史Ⅱ-植物からみるヨーロッパの歴史-」(放送大学教材)>

テラリウムの起源は19世紀のヨーロッパ。プラントハンター史上の革命といわれたウォードの箱まで遡ります。

18~19世紀のイギリスやオランダでは、世界中の珍しい植物や有用な植物を求めて、多くのプラントハンターを派遣していました。観賞用のためだけではなく、薬用や工業用など、アジアや中南米からもたらされる植物には高い価値があったのです。

飛行機のない時代の長い長い船旅。当時、生きた植物を持ち帰るのは至難の業でした。船の上では満足な水を与えることができず、海からの潮風にさらされます(多くの植物は塩分に弱い)。せっかく苦労して採集してきた植物も、本国に持ち帰るころには多くが枯れてしまっていました。

それを解決したのが「ウォードの箱」です。

ウォードは、密閉されたガラスケースの中で、蒸発した水分が結露して土に戻ることを発見しました。1843年、ウォードはシダと草と少量の土を入れたガラスケースをオーストラリアへ向かう船に乗せ、実験を行います。一滴も水を与えず、約6カ月に及ぶ航海を終えた箱の中では、シダがきちんと育っていました。

それ以降、多くのプラントハンターが植物の輸送のためにウォードの箱を使うようになりました。

密閉されたガラス容器で水分の循環を利用したウォードの箱は、“植物を水分不足と塩分から守るための箱”でした。これが現在のテラリウムの起源といえます。

参考:「プラントハンター ヨーロッパの植物熱と日本」(講談社)

 

ロンドンに訪れたシダブーム

シダブーム

ウォードの箱(テラリウム)が一般の家庭へと広がっていくきっかけとなったのが、ちょうど同じころ起きていたロンドンのシダブームです。

当時のロンドンは、産業革命による深刻な大気汚染が起こっていました。そんな中で、日陰に強く、空気の汚れにも強いシダが人気となっていたのです。

同じ頃、ガラス税が引き下げられたため、ガラス素材のウォードの箱も安価に手に入れられるようになりました。

その結果、一般家庭でもガラスケースでシダを育てるようになり、ロンドンの多くの家庭に広まったのだとか。

 

大気汚染によって屋外の園芸が楽しめないこと、日光不足で育てられる植物の種類が限られていたこと。自然を楽しむ環境が限られていたからこそ、ガラスケースを利用したテラリウムのようなものが流行っていったのかもしれませんね。

自然の少ない都市部を中心に流行している、日本のテラリウム人気とよく似ているように感じます。

 

日本におけるテラリウム

ランのテラリウム

日本では、いつごろからテラリウムが楽しまれるようになったのでしょうか。

前述したウォードの箱は、江戸時代に日本に持ち込まれ、日本からヨーロッパへ航路で植物を輸送するのに使われていたようです。(1860年、ロバートフォーチュンが日本からイギリスへ菊などを輸送するのに用いられた記録があります)

趣味の園芸アイテムとして一般の家庭に普及するようになったのは、比較的最近のこと。雑誌「趣味の園芸」(NHK出版)で初めて特集記事としてテラリウムが紹介されたのが1983年1月号です。

趣味の園芸

密閉されている水槽タイプもありますし、口のあいている器もありますね。

コケも使われていますが、コケだけのテラリウムはまだありません。主にベゴニアやセントポーリアを育てるための装置として人気だったようです。

書籍検索したところ、同時期のアクアリウム系の雑誌でもテラリウムの取り上げがみられました。おそらく日本の家庭園芸の中にテラリウムが広く浸透していった時期なのでしょう。

 

最近の苔テラリウム人気

苔テラリウム

さて、そしてここ数年巻き起こっているのが「”苔”テラリウム」人気。コケは多湿を好むものが多く、植物の中でもテラリウム栽培に適した種類であるのが一つの要因です。

また、コケは他の植物と比べると小さいので、テラリウムも小さく作れます。コケのみでの植え付けなら、5~6㎝程度の小瓶で育てることもできます。

小さいので身近に置きやすいということも、広く人気になった要因ではないでしょうか。職場のデスク周りに飾って、癒しアイテムとして使っている人も多いようです。

 

もう一度見直そう “苔テラリウムとは”

今回は、「テラリウム」の起源から、園芸的に広まった背景などを見てきました。

テラリウムとは、【容器の中で、湿度や温度を保ちながら、陸上の生き物を育てる方法】。

かつて水やりが困難だった長期の船旅に使われたように、【保湿と保温】がテラリウムの特長。園芸的には、コケやシダ、熱帯の植物などに適している栽培方法です。

そう考えると、蓋がある密閉型の容器、または蓋がなくても深さがあり、または口が狭く、湿度を保つことができる容器で育てる方法を『テラリウム』と捉えるのが正しいのではないでしょうか。

 

人気が出てくると、本来のテラリウムの定義からはかけ離れたものまで「苔テラリウム」として取り扱われるようになってきます。

Instagramで【#苔テラリウム】を検索すると、もはや器で囲われていないようなものも。「苔がガラス器に植わっていれば、苔テラリウム」状態になってしまっています。

湿度を保つことで植物を育てやすくする装置として発展してきたのが「テラリウム」。どんな植物でもテラリウムで育てられるわけではなく、なかでもコケはテラリウム環境に向いている植物といえるのです。

その特長をしっかり伝えつつ、苔テラリウムのよさを広めていきたいものです。

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