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コケの聖地!屋久島に行ってきました【屋久島の基本情報と苔スポット】
日本にある1900種のコケのうち、600種以上が生息している島、屋久島。
苔の仕事をしているなら一度は行ってみたいと思っていた屋久島に、ようやく足を運ぶことができました。
今回は、屋久島にコケを見に行くにあたって知っておいた方がよいことをまとめてみました。コケ目的で屋久島に行く方は、ぜひ参考にしてください。
大地が隆起してできた島、屋久島
まずは屋久島の基本情報。
屋久島は、約1400万年前に海底でマグマが冷え固まってできた花崗岩が隆起してできた島です。
山がある島というと「火山なのかな?」とイメージされる方も多いですが、屋久島は火山島ではありません。
マグマが海底プレートを押し上げる、または地殻変動などにより、大地が隆起して島となったのです。
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屋久島の最大の特徴は、「めっちゃ高い山がある!」ということ。
九州最高峰の宮之浦岳(1,936m)を筆頭に、標高1,000mを超える山々が39以上連座しており、九州地方の高い山の1位から8位までが屋久島にあるのだとか。
島の周囲は約130km、最大標高は宮之浦岳の1936m。島の中心部にはいつも高い山が見えます。
島の9割は森林が占めており、人が住む集落は島の周囲に点在しています。
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たとえば以前に行った東京都の八丈島は周囲約60km、島で一番高い八丈富士は854mです。屋久島の規模感がわかりますね。
なぜこんなにコケの種類が多いのか?ポイントは「垂直分布」と雨
「垂直分布」とは
屋久島は限られた面積に「めっちゃ高い山がある」ために、多様な気候がぎゅっと一つの島内で見られるという特殊なエリアになっています。
人が住んでいる低地はハイビスカスやブーゲンビレアが咲く亜熱帯なのに、同じ島内の山頂では北海道なみの気候。冬の山頂には雪が積もります。
小さな島の中に、南北に長い日本列島の様々な環境がぎゅっと詰め込まれているのです。
このように標高や水深といった高度方向の変化に伴い、生物の種類や生育状態が変化する現象を「垂直分布」といいます。
日本にあるコケ1900種のうち600種もの種類が屋久島で見られる理由は、多様な気候がひとつの島の中に存在するからなのです。
雨が多く、湿度の高い森
また、屋久島はものすごく雨が多く、「1ヶ月で35日雨が降る」と言われています。
前述したように、屋久島は海に浮かぶ標高の高い山のかたまり。黒潮によって暖められた湿潤な空気はその山々にぶつかり、雲が発生し、大量の雨をもたらします。
湿度が多い環境が好きなコケたちには最高の環境ですね。
コケ好きおすすめスポット
コケ好きにおすすめ①白谷雲水峡
標高600〜1,050mにある、屋久杉などの原生林を鑑賞できる自然休養林です。
ここには、もののけ姫のモデルになったと言われている「苔むす森」というスポットがあります。宮崎駿監督も何度もここを訪れたのだとか。
1時間~5時間のコースが用意されていますが、「苔むす森」を見るためには往復4時間ほどの時間が必要です。
今回は時間がなく「苔むす森」までは行けなかったのですが、一番短いコースでも峡谷の景色や足元のコケと植物たちを楽しめました。
コケ好きにおすすめ②ヤクスギランド
屋久島に詳しいコケ仲間におすすめスポットを聞いたところ、一番多かったのが「ヤクスギランドがいいよ!」という声。
ヤクスギランドは、標高1000~1300mに広がる自然休養林。安房という集落から車で40分ほどの場所にあります。
木道が整備されているので歩きやすく、時間や体力に合わせた5つのコースで散策を楽しめます。
コケを観察したい私たちは、一番短い30分のコースを2時間かけて歩きました(笑)
白谷雲水峡よりライトで、体力がなくても大丈夫です。
(どんなコケが見られたのか、別記事で紹介します)
遠い?近い?屋久島ガイド
東京から飛行機を乗り継いで3時間弱
屋久島に行くためには、まずは鹿児島を目指します。鹿児島から、飛行機・高速船・フェリーのいずれかで屋久島に向かうことになります。
今回は滞在時間を重視して飛行機を選択。羽田空港から鹿児島空港まで1時間40分、鹿児島空港から屋久島までプロペラ機で約35分。
鹿児島空港内での乗り継ぎもスムーズで、東京(羽田空港)から約3時間弱で屋久島に到着しました。思ったより近い!
島内観光スポットはバスでも行ける
島の交通は車。運転できる人はレンタカーが便利です。
登山目的の人はタクシーで登山口まで行く人も多く、早朝のタクシー予約も盛んです(そのため夜にタクシーはつかまりづらい。飲みに行きたい人は注意)
また、「白谷雲水峡」や「ヤクスギランド」にはバスが出ています。観光バスのツアーもあるので調べてみるとよいかも。
お弁当をもって山へ行こう
ひとたび山へ入ると、食事をする場所はありません。白谷雲水峡やヤクスギランドも、自販機はあるものの食べ物を売っているような場所はありませんでした。
そこで活躍するのはお弁当屋さん。集落には早朝からやっているお弁当屋さんが結構あり、登山の方も朝お弁当を調達して山へ行くようです。私たちが泊まったホテルでも、事前に予約すればお弁当を用意してくれるとのことでした。
1日じっくり山でコケと戯れたい人は、お弁当持参がおすすめ。
注意) コケはそんなに押されてない
屋久島の主役は屋久杉
コケ好きにとって屋久島は間違いなく「聖地」ですが、屋久島観光では思ったよりコケは推されていないな…という印象でした。
屋久島の主役はなんといっても屋久杉なのです。
花崗岩の上という厳しい環境でゆっくりと育つ屋久杉は年輪が細かく、密度が高い木材になります。
過去には貴重な資源として伐採が行われ、山の中にそのための集落がつくられるなど、国家の産業として推進されていました。
屋久杉を学べる「屋久杉自然館」。資料の量も豊富で見ごたえがすごい。
江戸時代には屋根用の材木として、人の手によって切り出されていた屋久杉。近代になり電動化が進んだことで伐採のスピードが上がり、多くの貴重な森が消失しました。
その後一大産業だった林業から転換し、島が自然遺産として登録されるまで、人々の様々なドラマがあったことがよくわかる展示の数々でした。
屋久島で最も大きな「縄文杉」から折れた枝の展示。
本体はどれだけ大きいのか…想像してもピンときません(縄文杉を見に行くコースは往復10時間のトレッキングが必要)。
それ以外にも、海でのアクティビティ、ウミガメの産卵などなど屋久島には主役級の見どころがたくさんあり、コケはそれほど注目されていません。
ホテルのロビーに色々な書籍が置いてありましたが、なんとコケ図鑑は置いていなかったです。まだまだアピールの余地あり…!
コケ観察に行くならガイドを頼もう
というわけで、屋久島の中にはコケの情報はあんまりないなーという印象。
もちろん山に行けばコケのある風景は楽しめるけれど、もっと詳しくコケを見たい人・お目当てのコケがある人は、苔に詳しいガイドを頼んでおくのがおすすめです。
「屋久島のコケ屋」の大水さん。
見たいコケや山歩きできる時間を相談しておけば、最適なコースを提案してくれますよ。
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最後に、屋久島で見た色々な写真を。
白谷雲水峡、ヤクスギランドで見たコケと植物については別記事にまとめます。お楽しみに!
平地は暑くて、亜熱帯の植物がたくさん。大きいガジュマルの木。
山ではサルに遭遇!
屋久島はトビウオ漁がさかん。トビウオ料理たくさん食べました。
お土産物屋さんで苔テラリウム発見!
大水さんのコケ栽培場近くで、素足でコケの絨毯の上を歩く!
屋久島でのコケ栽培について、インタビュー動画も撮りましたのでそちらもお楽しみに。